ふと視線を感じて振り返ると、愛犬がこちらをじーっと見ている。
犬と暮らしていると、そんな経験はありませんか?
「もしかして大好きって言ってる?」
と思いたくなる仕草ですが、犬が人を見つめる理由はひとつではありません。
実際に、犬と飼い主が見つめ合うことと、人と犬の関係について調べた研究があります。
この記事では、
「犬が飼い主を見つめる=愛情のサイン」
と本当に言えるのか、研究でわかっていることと、まだ断定できないことを分けて解説します。
結論|見つめることは飼い主との関係に関わる。でも「大好き」とは限らない
結論からいうと、
犬が飼い主を見つめる行動は、人と犬の関係をつくるコミュニケーションのひとつと考えられます。
犬と飼い主が見つめ合うことと、オキシトシンという体内物質の変化との関係を示した研究もあります。
一方で、犬は
・何かしてほしい
・飼い主の反応を確認したい
・困って助けを求めている
・不安や警戒を感じている
といった場面でも人を見ることがあります。
そのため、
「見つめてくる=必ず大好き」
と判断するのは単純すぎます。
視線だけではなく、そのときの状況や犬の表情、体の様子まで一緒に見ることが大切です。
研究では、犬と飼い主が見つめ合うと何が起きた?
犬と人の視線について特に知られているのが、2015年に『Science』に掲載された日本の研究です。
研究では、犬と飼い主が交流したときの行動と、尿中のオキシトシン濃度などが調べられました。
オキシトシンは、人同士の親子関係などでも研究されている体内物質です。
研究の結果、
犬から長く見つめられた飼い主では、交流後にオキシトシン濃度が高くなる傾向が確認されました。
さらに研究者らは、
犬が飼い主を見る
↓
飼い主側に変化が起こる
↓
飼い主が犬に関わる
↓
犬側にも変化が起こる
という、人と犬の関係を強める循環が存在する可能性を示しました。
では「犬が見つめる=愛している」と証明された?
ここは注意が必要です。
この研究は、犬と飼い主の視線が人と犬の社会的な関係に関わっている可能性を示す重要な研究です。
しかし、
「犬が見つめた瞬間に愛情を感じている」ことを直接測定した研究ではありません。
オキシトシンについても、単純に「愛情だけを表す物質」と考えるべきではありません。
そのため、
「見つめる=愛している証拠」
「長く見つめるほど飼い主が好き」
とまでは言えません。
PET NEXUSでは、
犬と飼い主が穏やかに見つめ合うことは、両者の関係に関わるコミュニケーションのひとつ
と考えるのが適切だと判断します。
犬が飼い主を見つめる理由は愛情だけではない
犬が人を見る行動については、ほかにもさまざまな研究があります。
そのため、愛犬に見つめられたときは、その前後の状況も確認してみましょう。
① 飼い主とコミュニケーションを取っている
犬にとって、人の顔や視線を見ることは重要なコミュニケーション手段のひとつです。
特にリラックスした状態で飼い主と穏やかに見つめ合っているなら、良い関係の中で行われている可能性があります。
ただし、これだけで特定の感情まで決めつけることはできません。
② 「ごはんがほしい」「取ってほしい」と伝えている
犬は何かを要求するときにも人を見ます。
2014年に発表された研究では、犬からは取れない場所に食べ物を置き、飼い主の協力が必要な状況を調べました。
すると犬は、
飼い主を見る → 食べ物を見る → また飼い主を見る
というように、視線を使った行動を見せました。
つまり、
「こっちを見ているから愛情表現」
とは限りません。
食事の時間が近いときや、おもちゃが取れないときなどは、
「これをどうにかして」
と伝えている可能性もあります。
③ 飼い主の反応を確認している
犬は、どう行動すればいいのかわからない場面でも人を見ることがあります。
見慣れない物を犬に見せた研究では、多くの犬が飼い主のほうを確認しました。
さらに、飼い主がその物に対して示す反応によって、犬の行動にも違いが見られています。
犬は単に飼い主を眺めているだけではなく、
「これは大丈夫?」
と人から情報を得ようとしている場合があると考えられます。
④ 困って助けを求めていることもある
自分では解決できない問題に直面したとき、人を見る犬もいます。
たとえば、欲しい食べ物があるのに自分では取れない状況です。
このようなときに人の顔を見たり、対象物と人を交互に見たりする行動が研究されています。
愛犬がこちらを見たあと、
・おもちゃを見る
・ドアを見る
・食器を見る
・また飼い主を見る
という行動をしているなら、何かを伝えようとしている可能性があります。
「優しい目」と「緊張した目」は同じように考えない
犬の視線を見るときに大切なのは、
目だけで気持ちを判断しないことです。
たとえば、
・体の力が抜けている
・口元がやわらかい
・自然な姿勢をしている
・普段と変わらない様子で近くにいる
といった状態なら、比較的落ち着いていると考えやすくなります。
一方で、
・体が固まっている
・唸っている
・距離を取ろうとしている
・耳やしっぽなど普段と違う様子がある
といった場合は、単純な愛情表現と考えない方が安全です。
「見つめている」というひとつの行動だけではなく、犬の全身とその場の状況を見るようにしましょう。
犬に見つめられたら、見つめ返してもいい?
愛犬がリラックスしていて、普段から穏やかに交流している場面なら、自然に目を合わせることまで避ける必要はありません。
犬と飼い主の視線が、両者のコミュニケーションに関係することを示した研究もあります。
ただし、
どんな犬に対しても長時間じっと目を見続ければ仲良くなれる、という意味ではありません。
知らない犬や、緊張・警戒している犬に無理に近づいて見つめ続けるのは避けましょう。
愛犬の場合でも、目をそらしたり、その場から離れたりするなら、無理に視線を合わせ続ける必要はありません。
こんなときは「愛情サイン」と決めつけない
いつもの穏やかな視線とは違い、
・急に見つめることが増えた
・落ち着かない
・痛そうな様子がある
・食欲や元気がない
・唸るなど普段と違う行動を伴う
といった変化がある場合は注意してください。
犬は言葉で体調を伝えることができません。
普段と明らかに違う状態が続く場合には、「甘えているだけ」と決めつけず、必要に応じて獣医師へ相談しましょう。
まとめ|犬の視線は「大好き」だけでは説明できない
犬が飼い主をじっと見つめる行動には、ちゃんと意味がある可能性があります。
研究では、犬と飼い主が見つめ合うことと、両者の社会的な関係に関わる体内物質の変化との関連が報告されています。
一方、犬は
・コミュニケーション
・要求
・助けを求める
・飼い主から情報を得る
・不安や警戒
など、さまざまな理由で人を見ることがあります。
そのため、
「見つめてくる=大好き」ではなく、「犬がこちらに何かを伝えているかもしれない」
と考えると、愛犬の行動をより正確に理解できます。
次に愛犬と目が合ったら、目だけを見るのではなく、表情や姿勢、その直前に何があったのかまで観察してみてください。
いつもの視線にも、これまで気づかなかった意味が見えてくるかもしれません。
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