愛犬がしっぽを振りながら近づいてくると、「喜んでいる!」と思いますよね。
たしかに、うれしい場面で犬がしっぽを振ることはあります。
しかし、「しっぽを振っている=喜んでいる」とは限りません。
犬はさまざまな状況でしっぽを振ります。研究では、相手や状況によって振り方に違いが現れることもわかっています。
結論|しっぽを振るだけでは「喜んでいる」と判断できない
しっぽを振る行動は、犬の感情や周囲への反応と関係する重要なサインです。
ただし、しっぽを振っているという事実だけから「この犬はうれしい」「友好的だ」と決めつけることはできません。
興奮しているときや緊張しているときなどにも、しっぽを振ることがあります。
大切なのは、しっぽの位置や動きだけでなく、耳・表情・姿勢など体全体を見ることです。
研究では「相手によって振り方が変わる」ことが確認された
犬のしっぽについて興味深い研究があります。
Quarantaらが2007年に発表した研究では、犬に飼い主、知らない人、猫、見知らぬ犬など異なる刺激を見せ、しっぽの動きを調べました。
その結果、刺激によって、しっぽを左右どちら側へより大きく振るかに違いが確認されました。
つまり犬のしっぽは、ただ同じように左右へ動いているわけではなく、そのとき向き合っている相手や状況によって動き方が変化する可能性があります。
犬はほかの犬の「振る方向」にも反応する
さらに2013年、Siniscalchiらは犬に、左右どちらかに偏ってしっぽを振る犬の映像を見せる実験を行いました。
左側への動きが強い尾振りを見た犬では、右側への動きが強い尾振りを見た場合より、心拍や不安に関連する行動が高くなりました。
この結果は、犬がほかの犬のしっぽの動きの違いに反応していることを示しています。
ただし、「右に振れば必ずうれしい」「左なら必ず嫌がっている」という単純な判定方法として使えるわけではありません。
「右・左」だけを見れば犬の気持ちがわかる?
ここは研究結果を誤解しやすいポイントです。
研究では左右への偏りが確認されていますが、家庭で一瞬しっぽを見ただけで犬の感情を正確に判定できる、と証明されたわけではありません。
犬による個体差もあり、しっぽの形や普段の位置も犬種や個体によって異なります。
「右なら○○、左なら○○」という診断表のように使わないことが大切です。
しっぽを見るときは「位置」と「体全体」も確認する
犬の気持ちを読み取るときは、しっぽだけを見るのではなく、ほかのサインと組み合わせて考えます。
- しっぽは高い位置か低い位置か
- 動きは大きく柔らかいか、小さく硬いか
- 体全体がリラックスしているか
- 体が硬くなっていないか
- 耳はどの位置にあるか
- 相手から離れようとしていないか
たとえば、しっぽを振っていても体全体が硬く、相手をじっと見ている場合と、体を柔らかく動かしながらしっぽを振っている場合では、同じ意味とは限りません。
知らない犬がしっぽを振っていても、すぐ触らない
「しっぽを振っているから触っても大丈夫」と考えるのは避けましょう。
尾振りだけでは、その犬が人との接触を望んでいるかまでは判断できないからです。
知らない犬の場合は飼い主に確認し、犬自身の体の動きや距離の取り方も見ながら接することが大切です。
しっぽを振らない=うれしくない、でもない
反対に、しっぽを大きく振らないからといって「この犬は喜んでいない」とも限りません。
犬によって表現の仕方には違いがあります。また、犬種や個体によってしっぽの長さや形、普段の位置も異なります。
普段の愛犬がどのように体を動かすのかを知っておくと、いつもと違う変化にも気づきやすくなります。
まとめ|しっぽは「喜びだけ」を表すものではない
- 犬はうれしいとき以外にもしっぽを振ることがある
- 研究では相手や状況によって尾振りの左右差が確認されている
- 犬はほかの犬の左右の尾振りの違いにも反応する
- 右・左だけで感情を断定することはできない
- しっぽの位置・動き・体全体の様子を一緒に見る
- しっぽを振っているだけで「触って大丈夫」と判断しない
犬のしっぽは、気持ちを理解するための大切な手がかりです。
ただし一つのサインだけで決めつけず、そのときの状況と体全体のサインを組み合わせて見ることが、愛犬をより正確に理解するポイントです。
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参考文献
Leonetti M, et al. Why do dogs wag their tails? Biology Letters. 2024.
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